Werther_is_kyokon’s blog

R18となっております

みえるものばかりに とらわれると みえないものに あしもとを すくわれるよ

もう言っても平気だろう。

数年前の丁度今頃から、私はとある飲食店でバイトをしていた。金がないからバイトをする、という単純な理由で、何故そこで働きたいと思ったかと言えば単に「時給がいいから」という早計なものだった。無論金稼ぎ感覚でやるつもりだったのでモチベーションなんてゼロだし仕事もやる気なんて更々無い。当然無能で店長によく怒られてた。

そこでまぁ、ちょっと嫌な思いをした訳ですね、まぁシンプルに言えば店長に嫌われまして、職場での人間関係に苦労したのです。店長に嫌われると大変ですね、店長に媚をうる20代後半の元ヤンフリーターみたいなヒト科メスが寄ってたかって俺を虐める訳です。待っているのは露骨な嫌がらせ。俺だけ賄いが無いとかもうザラで、酷い時には舌打ちとか、目の前で悪口とか言ってくる有様であります。もう普通にパワハラの域だったんですけど、当の私は「ハハッ、今日の低賃金労働者と非正規雇用者はよく吠えるなぁ笑笑笑」と腹のなかで勝利宣言をしていたのでした(私の屈強な精神力と類い稀なる発想力の勝利と言ってもよろしいのでは無いでしょうか)。

そんな矢先に私の堪忍袋の緒がブチ切れる事件が起きましてね、まとまった金も貯まったし大学も忙しくなってきたのでそろそろ辞めようかと思いまして、店長に「来月から大学が忙しくなるので今月一杯でやめさせて頂きたく云々」と辞表を送ったんですね、

で、そうしたら次のバイトの時にクソ店長がもう嫌味という嫌味を私に言ってくる訳ですよ、何か言う度に「や、お前どうせ辞めるもんな、」と、「ま、お前は社会に出ても〜」と、なんだ道徳教育ってのは全く機能してないじゃないかと最早笑えて来るような罵声を私に浴びせてくる訳でして、いつもなら笑って「すんますぇ〜ん」っつって済ませてる私も流石にこの時だけはキレそうになりましたね。しかしまぁ、如何せん私は店長より仕事が出来ないことは自明の理であり、私が無能な事は揺るぎない事実な訳です。かといってこの理不尽に耐えろって言われたらそりゃ無理だろってことで、なにか復讐的な事をしてやろうと思い至ったのであります。アイツらがどうしたら一番嫌がるだろうかってことを四六時中考えてたんですね、そうしたら一つの解に辿り着いた訳です。

 

食べ〇グでボロクソ批判してやろ♥

 

飲食店である以上、食べ〇グという指標からは逃れらないんですね、仲の良いシェフ(この人も店長に嫌われてすぐ辞めてしまった)の人曰く、食べログが0.5違うと売上が倍近く変わってくる事もあるそうです。ああなるほど、食べ〇グってのはそんなに偉大なのかと、だったらその食べ〇グという媒体でボロっクソに、ほんとボロっっっクソに言ってやろうと、思い至った訳であります。(今考えると普通にどっかの法律とかに触れてそうではありますが、こちらもパワハラを受けていたのでそこは目には目をって事で。)

思い至ったその日から私は食べ〇グに書き込みを始めまして、家の中のあらゆる電子媒体を用いて最低評価、星1を押しまくった次第であります。ある時は母親のアカウントを使いましたり、また偶然知人が食べ〇グのヘビーユーザーだったのを知った際には、勝手に其奴のスマホを操作致しまして、容赦無く星1をつけたものでありました。加えて、口コミ欄の方には「店長の態度が横暴である」、「店長がバイトに叱ってる様を見ただけで飯が不味くなった」、これ以上は流石にバレるので伏せますが、もう兎にも角にも店長の悪口。店長のせいで飯が不味いとか、店長が不愉快で気分が悪いとか、そういうことばっか書き連ねた次第な訳です。

面白いことに、飲食業界の人間というのは食べログを逐一チェックしているようで、食べログの評価が低いと露骨にそれを気にする節が面白い程見て取れました。「食べログの口コミが最近あんまり良くねぇんだよ」とまた店長が不機嫌になり、いつものように俺に当たり、俺が食べログにクレームを寄せ、また店長が不機嫌になる、といったような無限の負のスパイラルを重ねる地獄のような日々があった事もここに記しておきたい所であります。(これを私は”食べロボロスの輪”と呼びたい。)

ある日、というか、食べ〇グが3.2を割ってから、いよいよ奴らに焦りが見え始めてそれはそれで最高に面白かったが、ここで潮時を感じた。良く知らんが、奴らにとって食べログの”3.2”というのは一種の絶対防衛ラインらしく、ここより下になると飲食店として評判がヨロしくない、との事だった。いい歳した大人がこんな電子媒体の星一つでここまでムキになるなんてバカバカしく思えたし、何より惨めに感じられた。

バイト最終日になった。私には最後の役割があった。「本日は体調が優れないので休みます。今までお世話になりましたあ(一言一句同じ文章を店長に送った)」

見事なまでのバックレである。これを送った直後、物凄い速さで既読がついたが、二度と彼奴の気持ち悪い文章を見たくなかったのでラインをブロックしてトーク履歴も消した。あの時、俺はやっとシャバの空気を吸えた気がした。人として成長できたかと問われたらあの時確実に「何か」が自分の中に起こったことは事実であり、それが今の自分の中で生きているかと問われたらそれも間違いなくyesと返せる自信がある。

あれから数年の時が過ぎた。俺は今でもバイトを辞める時はバックれるし、バイト先だろうと何処だろうと多少の理不尽を受けても流せるだけの屈強な精神力を身につけた。それは紛れもなくあのバイト先のお陰である。今では俺は寧ろあの小川という週六12時間勤務年収目算500万に満たない社会的弱者に感謝さえしている。それは今の世の中を上手く渡り歩く上で必要なスキルではないかと切に思う次第である。

 

~完~