Werther_is_kyokon’s blog

R18となっております

これより恐ろしいチキンレースがこの世に存在するだろうか

俺が高校3年生の時、俺だけがやってる遊びがあった。遊びという程楽しいものでもない。1歩間違えたら破滅する。これは決して冗談の類ではない。本当に「破滅」するのだ。場所は女子便所でやっていた。予め断っておくと俺の高校は男子校である。染色体XXは一人もいない(しかし模試の際に御茶ノ水女子大を志望するあまり性別欄に女とマークする人間は後を絶たなかった)。何故女子便所があるかと言うと、学校説明会で来る教育ママゴンのために生徒から高い授業料をせしめて大層立派なものを拵えたというカラクリで、俺的にひじょーに気に食わなかった。その上、俺達の男子便所はウォシュレットが無く毎度馬鹿共のせいでうんこがこびり付いてる有様だが、女子便所は普段誰も使わない事もあってとても綺麗だった。俺は普段から女子便所を愛用していた。

 

ある日の事だ。いつものようにうんこをしてうんこまみれのケツに容赦なく水攻めをしていると、脱糞中にIQ300になる俺の脳は新たな境地を悟った。「おしり」を押す。ウィーンとノズルが出てくる、コンマ数秒のラグの後にお湯が出る、17歳の若き天才はそのコンマ数秒に命を賭けようとした。

 

この”コンマ数秒”の間にうんこをすれば、ノズルをうんこでへし折れるんじゃね?

 

天才の導き出した仮説はこうだ。パンツを下ろす→ケツをセットする→腹を括る→おしり(パワフル)を押す→ノズルが出る→うんこをする→ノズルをうんこの重みで破壊する→「止」を押す→ノズルを引っ込める→勝利

 

今考えると知的障害者のそれと大差のない理論であるが、当時の俺は全力で楽しんでいた。さらに、この「チキチキ!脱糞ゲーム!」には恐ろしいリスクがあった。皆さんご存知のように、脱糞をした直後に水が出ると、もれなくうんこまみれの液体(うんこ水溶液と命名した)が俺のケツめがけて飛んでくるのである。まるで産まれた川に戻る鮭のように、大腸目がけてうんこがケツに突っ込んでくるワケだ。文面にすると大した話ではないが、これは人間の尊厳に関わる切実な案件である。1歩間違えたらケツがうんこまみれになる。これがクラスの人間に知られたらまず「〇〇(俺の苗字)がうんこ漏らしたー」と声の大きい遠藤くんに言われることが必死である。それだけは是が非でも避けたい。私は腹を括った。

 

「おしり」を推す 水の勢いは5分の5  無論パワフル 準備が整った。つかの間の静寂を打ち破るかのように、機械音がケツの下から聞こえる。ー”ヤツ”が来るー。機械音が止まった。「今だー」思考のスピードに肛門筋が追いつくと、俺の肛門から変わり果てた“昨日の晩飯”が解き放たれる。勝利を確信し、「止」を推す。勝った!俺は勝った!明らかに「捉えた」音がする。いつもとは異なる謎の機械音が響く。私の勝利が確かであることを確信する。さて、第1波が出たことだし浣腸をして残りのうんこをしましょうか

 

 

やらかした

 

ここで自分の愚かさに気づく。今さっきウォシュレットは「破壊」したのだ。今パワフルを襲うものなら、5分の5の勢いでうんこがケツ目がけて突っ込んでくることが確定している。しかしなんという皮肉だろう、腹に力を入れすぎたせいで中途半端にうんこが出てしまった。まだ糞は残っている。俺はうんこがしたいーーー。

 

5分後、俺は別の便器にいた。なんてことは無い。うんこをけつにつけたまま平行移動したのだ。ここが男子校で本当によかったと思う。勝利と敗北が交錯する。その表情は勝者の愉悦でも敗北者の慟哭でもなく、安堵だった。

 

(完)